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ぷよぷよシリアス『サタン様とリリスの話』

魔導設定とか色々引っ張ってきた上にSUN以前を未プレイなので
捏造に捏造してるけど一度夢で出てなんとなく書きたかったぷよシリアスです!
サタン様とリリスと+ドラコの昔の話です(・ω・´*)


特にグロシーンなんかはないですが、めっちゃ捏造しているので
そういうイメージが壊れるみたいなのが苦手な方はバックプリーズ
大丈夫な方のみ続きからどうぞ!
平和なプリンプのとある森林。魔力を帯びた土地に育つ珍しい動植物が豊富なこの森で、
見習い魔女のウィッチは目を輝かせ鞄に片っ端から植物やキノコを鞄に詰め込んでいた。

「ねーウィッチ、まだ帰んないのー?」

それを退屈そうに、半人半竜のドラコケンタウロス、ドラコが見守る。
うるさいわね、とウィッチはドラコを一瞥し、再び植物収集を始めた。

「っていうか、なんであたし連れて来られたのさー」

「決まってるでしょ、護衛ですわ。アナタ猪とかすぐ気づくじゃない。どうせ暇人だし」

「そりゃそうだけどさー、って暇人言うな!」

文句を言いながらも、熱心に植物収集に励むウィッチの耳には届かないと判断し、
ドラコは諦めて溜息を吐き、尾を揺らして木漏れ日が降り注ぐ頭上を仰いだ。

その時、一瞬光が遮られ、空が暗くなる。

「……?」

少し遅れて、バキバキと枝が折れる音、ついで何かが茂みに盛大に墜落する音が響く。
何事かと目を丸くしていた二人だが、その正体に気が付くと呆れた目で溜息を吐いた。

「……今度は何をしでかしまして、サタン様」

ウィッチが肩をすくめ、茂みに声を掛ける。
サタンは茂みから身を起こすと、やれやれと息を吐いて服に付いた葉を払った。

「いやー、ちょっとアルルの行動を観察していたのだが、バレてこっぴどく吹っ飛ばされてなー」

はっはっはっとのんきに笑うサタンに、「それストーカーじゃ……」とドラコが小声で突っ込んだ。

「まあそんなことはどうでもいい、問題は今度はどうやってよりバレずに観察するかだ」

「懲りてませんね!?」

「懲りるという文字は私の辞書に無い、それよりドラコ、
 今度アルルに会ったら今食べたいカレーの種類を聞いておいてくれ」

貢ぎ物にするのだと一方的に言うだけ言って、サタンは茂みの奥に消えていった。
その背中をぽかんと見守り、ドラコは「まー覚えてたらねー」と呆れ気味に息を吐いた。

「全く、ホントーにサタンさまはしょーがないんだから」

「ドラコさんはドラコさんで、言う程気にしてもませんわよね」

何気なく呟かれた言葉を聞いて、ドラコはきょとんと首を傾げ、
「そうだねえ」と、にへら、と口元を緩ませた。

「ま-、しょーがないなーとは思うけど、やっぱりあたしはあの人の側が落ち着くからさ」

「ファンクラブでしたかしら?」

「名義上はそうだけど、親衛隊みたいなものかなー、あたし達は殆どそうだよ、見る?」

そう言ってドラコが懐から取り出したのは、一族皆で撮った集合写真。
規則なのか髪も同じくらいの長さに切りそろえられており、
正直なところ全く見分けが付かず、ウィッチはまじまじと写真を見つめた。

「……どれがドラコさんでして?」

「あっ、ひどーい! よく言われるけどさー」

「みんな同じような顔してるじゃない。髪伸ばしたりしないの?」

「髪? あー、まあ伸ばしてもいいんだけど、基本戦う時って炎吐いたり
 炎身に纏ったりするからさー、髪痛んじゃうっていうか燃えちゃうっていうか……」

なるほど、とウィッチは納得したあと、ふと首をかしげた。

「……あなた達って、炎使う割に熱への耐性はわりと人並ですわよね」

「ん? んー、そういえばそうだね、まあケンタウロスだからじゃない?」

「にしては人に近いし、ルーツはどこにあるのかしら?」

「さあ? あたし歴史興味無いし難しいことわかんない」

研究職として血が騒ぐのか、ウィッチは興味ありげに尋ねるが、
知ってもいなければ考えてみる気すら無さそうなドラコの様子を見て早々に解明を諦めた。


その会話を耳に入れながら、サタンは少し離れたところで、ふと遠くを見た。
どこまでも広がっていそうな地平線の、さらにその向こう。こことは繋がっていない場所――




時は、一万年以上昔に遡る――

「ねえ、本当に良かったの?」

「何度同じことを聞く。私は一度決めたことは絶対だ」

一万年前の、されど見た目は現在と全く変わっていないサタンの傍には、
一人の女性が親しげに寄り添っていた。紫色の芯のある瞳をして、
赤い髪をポニーテールに結んでいる彼女の姿は、ほんの少し大人びたアルルナジャにとても似ていた。

彼女の名は『リリス』

彼女がとある理由で魔物を引き連れて動いていたところ、
天界に目を付けられ、それぞれ軍を率いて長き戦いが始まった。

「……キミの翼、あんなに綺麗だったのに」

その決着は、ある日突然訪れた。

「なに、お前の魂の方が我々より綺麗だった、それだけだ」

「存在としてはキミ達の方が綺麗だろうに、とんだ皮肉だね」

二人は、くすりと笑い合う。

そう、天界の軍を率いていた大天使、ルシファーが天を裏切ったのだ。
将に惑わされ、騙された軍はあれよあれよという間に壊滅。
ルシファーはリリス達を引き連れその場から速やかに撤退し、
堕ちて尚有り余る力を使って地獄を作り、そこに君臨する魔王《サタン》となった。

「それに、この翼だって、中々のものだろう?」

「うん、カッコイイよ」

姿を変える際、白く大きな天使の翼は黒く鋭い悪魔の羽へと変貌した。
サタンとしてもこちらの方が気に入っており、リリスに褒められ得意げにする。

「ぐーぐ!」

ぴょん、と、黄色い生き物が二人の間に飛び込んできた。

「おやカーくん、構って貰えなくて嫉妬しちゃった?」

カーバンクルは耳をぴょこんと上下させると、
二人の顔を見上げ、嬉しそうに「ぐー!」と一鳴きした。

「よしよし、どうした?」

サタンが声をかけると、カーバンクルは口の中から何か大きなものを取り出した。
その行動の迫力に唖然としていた二人だが、出て来たものを見て目を丸くする。

「これは……タマゴ?」

「ぐっぐぐー! ぐー!!」

『みんなで料理して食べようよ!』そう熱心に伝えてくるのが
飼い主のリリスにはわかり、どうしたものかとサタンの方を向いた。

「……待て。これはドラゴンの卵だ」

「ドラゴンの?」

リリスが、訝しげに尋ねる。
ドラゴンはとても気高く能力も高いが絶滅危惧種で、この地獄界にも殆ど残っていない。
そうでなくともドラゴンは溶岩の中や荒れ果てた岩山の頂上などあらゆる生き物が
寄り付かない場所に定住するというのに、カーバンクルがそう安々と卵を拾ってこれるとはとても思えない。

「私が魔力を見誤ると思うか?」

そう言われると反論できず、リリスは口ごもった。
次に、サタンは『最近見回りに出ただろう』とリリスに尋ねた。

「見回り? うん、まあ……地上で駆逐される魔族を助けるために、少し」

「その時、怪しげな場所に入らなかったか」

「怪しげなというよりは、溶岩が冷え固まった洞窟で――」

そこまで話して、リリスはハッとしたあと、つらそうな顔をする。

「……そうだ、そこで見たんだ。人間に無残に殺されたドラゴンを」

良質かつ高価な防具や装飾品の材料となる鱗を皮ごと全て剥ぎ取られ、
使えそうな骨も牙も抜き取られ、グズグズの肉塊となった、魔物が、落ちていた。

辛すぎて封じていた記憶。それがドラゴンだとは認識できなかったが、今思えば、
あんな形で大量の肉塊が残るような殺され方をされるモンスターは竜くらいだ。

「そこで拾ったのだろう、竜の忘れ形見を」

カーバンクルは首を傾げて、食べないのとばかりに鳴いた。

「……カーくん、悪いがこれは食べられない。私たちが預かることにする」

「ぐっ!?」

ショックを受け、卵を奪い返そうとするカーバンクルを、リリスが窘めた。

「だめ、カーくん。あの卵は食べ物じゃないよ。あとでコカトリスの卵を食べよう」

愛する主人であるリリスにそう言われてしまっては諦める他なく、
カーバンクルはつまらなそうにしぶしぶと卵を諦め、リリスの腕に抱かれた。

「で、それ……どうするの?」

「私に任せておけ」

そう言って、サタンは自室に戻った。



「……魔力補充、生命回復、灼熱の陣……」

ブツブツと呟きながら、サタンは台の上に書いた魔法陣に手を加えていく。
竜の卵に必要なものは、周囲から吸い取った魔力と生命力の蓄積と、高い温度。
それを、自身の力を魔法陣に移すことで、全て実現させようとしているのだ。

完成した魔法陣に卵を置くと、やがて卵は光に包まれ、
また、自らも光り輝き、最初は僅かな揺れ、それから音、さらにはヒビ割れと、
着々と新たな生命としてこの世に降り立つ準備を進めていった。

そして――

「ぎゃう」

そんな、甲高いながらもどこかに風格を感じさせる鳴き声と共に、
翼を持ち、緑色をした四足の竜、グリーンドラゴンが目覚め、サタンを見つめた。

「目覚めたか。……今日から、私が貴様の主人だ」

《……ごしゅじん、さま?》

サタンには、魔力を通じて魔物の言葉を理解することが出来る。
あどけない瞳を向けるドラゴンの言葉に「そうだ」と一度頷き、頭を撫でた――


「で、どうするの? そのドラゴン」

「飼う」

堂々とした即答。リリスは一瞬だけ驚きを見せたが、
すぐに口角を上げて面白そうに喉を鳴らし、笑った。

「へえ、魔王のペットがドラゴンか、それって中々粋かもね」、

「賢く誇り高く強大な生物だ、番犬……いや、番竜として役立ってくれるだろう」

小さなドラゴンはすりすりと、サタンの足元にすりよっている。

「ねえ、名前付けてあげないの?」

「名前?」

「ドラゴン、だとなんかそっけないじゃん。そうだね……ドーくんとかどう?」

カーバンクルのカーくんを肩に乗せ、得意げに出された提案を、
安直すぎだとサタンはバッサリ切り捨てた。

「ついでに言えば、こいつは雌だ。それらしい名前を付けてやらねば」

「むー、じゃあキミはどういう名前を付けるのさ」

ムッとするリリスの前でサタンは考え、ドラゴンの鼻先を指先でついた。

「そうだな。ドラゴンの女の子だ、ドラコで良いだろう」

「……キミの方が安直じゃないのかな……」

人のこと言えないよね、とジト目を向けるリリスだが、
「私が育てると決めたのだ」と言われれば特に返す言葉も無く、「あーはいはい」と諦めを見せた。

「ドラコちゃん、か……、まあドラゴンよりは愛嬌あるよね、よろしく」

頭を撫でられると、ドラゴンは小さく鳴いて満足そうに目を細めた。

「ところで、ドラコちゃんってどのくらい大きくなるの?」

「元々大型種だ。雌であることを加味しても4、5メートル程だろうな」

「……家の扉通らないじゃん」

「……まあ、ある程度大きくなったら、外で門番でもしていてもらおう」




こうして、二人とカーバンクルだけだった生活の場に新たにドラゴンが加わり、
二人の暮らしは一層明るいものとなった。リリスが連れてきた魔物達も、人間が来ず
住みやすいこの環境で続々と繁栄し、地獄の主であるサタンを主と認め付き従う者も多くなった。

やがて、リリスは統率者という立場を完全にサタンに譲り、
自らはたびたび地上に偵察に向かうようになった――ある目的を果たすために。

「リリス、また地上に出向いていたのか。外は危ないぞ、お前は魔物のにおいがついているから何に絡まれるか」

「だいじょーぶだって、私がそんなヤワに見える? 人間なんて怖くないよ、それより……」

何かを言いかけたリリスは、一瞬だけ眉を顰め、口ごもる。

「……いや、なんでもない」

「どうかしたのか?」

怪訝そうにするサタンに対してゆるりと首を振って、
リリスは肩に乗っていたカーバンクルをサタンの胸に押しつけた。

「ねえサタン、キミはあと何万、いや、何十万年生きる?」

「……、さあな。年を取ったという感覚なんて、遙か昔に忘れてしまった」

「カーくんは幻想を生きる生命体。その命の長さは私にも推測できない
 だから、この子の未来をよろしくね。……額の宝石を狙うハンターも多いんだ」

まるでどこかに居なくなってしまうかのような言葉を聞いて、
サタンはカーバンクルを腕に抱いたまま少しだけ不安そうな表情を向けた。
カーバンクルもそれを察したのか、大人しく抱かれながらつぶらな瞳をリリスに向ける。

「やらなければならない、ことがあるんだ」

不敵な笑みを浮かべ、凜々しい瞳の奥に強い意思を輝かせ
地上に向かう扉を開くリリスをサタンには引き留めることが出来なかった――




――それが、最後に見たリリスの姿だった。



滅びを運命付けられた世界。その綻びを、彼女は自身が世界を繋ぎ止める歯車と化し、
繋ぎ止め、結び合わせ、新たな世界に作り替えることで、崩壊を引き留めたのだ。

……元より、サタンは彼女の最終目標を知っていた。
だからこそ天を裏切り、墜ちてまで彼女に協力して動いていたのだ。

それでも、この現実を受け入れることが出来なかった。
取り残されたカーバンクルと共に、いつかリリスが戻ってくるのではないかと、
毎日地底の空を見上げては、時間の経過も忘れてただそこに留まり続ける生活を続けていた。

《サタンさま、サタンさま》

そんなサタンの側には、いつもドラコが寄り添っていた。
すっかり成長した巨大な竜は、虚ろな目で空を見上げる主人にそっと頭をすりつける。

《サタンさま、どうしてそんなに悲しんでいるの》

「……アイツが、リリスがどこかに行ってしまった。私とカーバンクルを置いて」

《どうしてリリスは行ってしまったの》

「わからない。……ただ一つ、この世界は組み替えられた」

サタンは、元より天使達を統率する大天使の一人であり、最も神に近い存在だった。
故に、世界に綻びが発生していて、いずれそこから一気に崩壊するであろうことにも、気が付いていた。

……そして、リリスが去ったあの日、その綻びが無くなったことにも。


日々遠い場所を見つめ過ごすサタンに対して、魔物達の信頼は徐々に薄れていった。
当然だ、魔物には元々自分の利益を考えて動く性格の者が多く、
また、複雑な思考能力を持つほど知能が高い種族も少ない。

今までだって、本来の主であるリリスが認めた相手で、
かつ力が強いから惹かれ、付き従ってきたのだ。

一日の殆どをカーバンクルと共にリリスが使うゲートを眺めて過ごす、
今の弱弱しいサタンに魔物達を繋ぎ止めて置ける魅力など存在していなかった。

「私にもうお前を繋ぎ止めておく権利は無い。これからは好きに暮らせ」

最早本人にも統率者としての意思はなく、
部屋の前に待機させていたドラゴンをの背を、そっと外に押した。

《……サタンさま、どうして?》

「私は旅に出る。しばらくここには戻らない。だからお前も自由に生きろ」

今の生活に耐えきれなくなり、サタンはリリスを探しに行く決意をした。
旅に出ること、しばらく戻らないことを、サタンはドラゴンに説明する。

《……一緒に……》

「だめだ。私は今や頂点を狙う者に襲われる存在。図体の大きいお前は目立つし、何よりも危険過ぎる」

いくらドラゴンといえど、王位を狙うほど実力のある魔物達に
束になってかかられては勝つことは難しい。だからこそ、サタンは彼女を逃がしたのだ。

“私はこの地を放棄する。しばらく戻って来ることもないだろう。好きなように暮らせ”

それだけ言って、サタンはカーバンクルを肩に乗せ、
遥か高くに作られた地上界へのゲート目掛けて翼を広げた。

それを、ドラゴンは、ただじっと見つめていた――



――それから、五十年の月日が経過した。

多くの生物にとってそれは膨大な時間だが、永久を生きる者にとってはほんの数分にも満たない。
あらゆる場所を飛び回っていたサタンはついに、森奥に封じられた泉の前にリリスの痕跡を発見した。

彼女の魔力に導かれた先は、一つの石板だった。
永い年月が経っても風化しないよう、丈夫な石を削り出し、魔法で深く溝を刻んである。

『サタン。……いや、ルシファー。ここまで探しに来てくれたんだね、嬉しいよ。
 キミと過ごした年月は、私にとって忘れがたいものとなった。感謝している。
 だからこそ、キミに何も言わず、この結論を導き出してしまったことは、心から謝罪をしたい。』

もし話せば止められると確信していた、そう綴られている石板を見て、
確かに自分ならそうしただろうなと、彼女のあどけなさの裏に隠れた何もかもを
見通しているような鋭い瞳を思い出し自嘲する。

『今キミがここに居るということは、私の答えは正解で、世界は修復されたのだろう。
 ……でも、今になって、本当にこれが最適解だったのか、疑問に思えてきたんだ』

その続きは書かれておらず、周囲を探してもそれらしき気配はない。
ふと石板の隅に魔法陣を見つけ、そっと魔力を流し込んだ。
……すると、石板がひとりでに浮き上がったかと思えば、光のホログラムを放出する。

「なるほど、私の魔力に反応するのか」

《気づいてくれると思っていたよ》

「リリス……!? お前、無事だったのか!!」

目を丸くし、駆け寄ろうとするサタンを、首を振って制した。

《いや、違う。私はただの魔力の固まり。置き手紙みたいなものだよ》

それでも、私ほどの魔力ならば本物とそう変わらない物言いが出来るだろうね、と付け加え、ホログラムの中のリリスは不敵な笑みを浮かべた。

「今どこに居る」

《……遠く。ずっと遠くに居る。この場所とは別の次元に》

「どうして何も言わなかった」

非難の目を浴びせられたホログラムは、本人がそうするように髪先を指でくるくるいじりながら、バツが悪そうに目を逸らした。

《そうするしかなかったんだ。世界なんて大きなものの代償は、膨大な魔力だけじゃなく、魂まで捧げなければ釣り合わない。魂を接着剤として組み込んで、初めて修復出来るものだった》

「そんなの、お前が犠牲にならなくても」

《私が、と言うのだろう。だからキミには黙っていたんだ》

考えを見通されたような発言に、サタンがぐっと言葉に詰まる。

《こう見えて、結構好きだったんだよ。キミのこと》

唐突な告白。だからこそ、とホログラムは付け加える。

《キミには自由に生きてほしいと思った。自分の幸福を見つけてほしいと》

「……私は、十分幸福だった」

《ありがとう。でも、それは本当の幸福じゃない。だってキミは、自由を知らない》

天の使いとして生まれてからずっと神に縛られ、自分と共に運命に縛られ、常に何かに縛られているサタンに自由な幸福を見つけてほしいのだと、語られる。

それでも、サタンは今一つ納得できない様子で、リリスを見た。

「お前の居ない場所に、幸福なんて」

《ああもう……、カーくん!》

叫び声に反応して、カーバンクルがサタンの肩から飛び降り、突如光線を撃ち放つ。

「うわっ!? な、なんだ!?」

《すぐそうやってうじうじして。キミの世界には私だけだった? あの子達はどうしたの?》

あの子達、とはリリスが引き連れていた魔物のことだろう。

《……私、正直キミがうらやましい。カーくんやあの子達とは数百年一緒だったけれど、それでも、最期まで一緒にはいられない》

膨大な魔力のおかげで、人間としてはあり得ないほど長い命を持ったリリスとはいえ、魔族には遠く及ばない。肉体という概念がなく、魔力だけで存在しているような魔族達の寿命は、それこそ途方もない者が多いのだ。

《彼らは永い間、人々に虐げられてきた。勿論人間に危害を加える者が居るからだけれど、みんながみんなそうじゃない。どうしていいのかわからないまま、隠れ住んでいる子達がたくさん居た》

そういった魔物達に同情して手を貸し、導いていくうちに、気が付けば魔物使いと人に呼ばれるようになっていたのだと、彼女は語った。

《ねえ、生きることに目的が欲しいのならば、私の代わりに彼らを導いてあげて。守護者を探すカーバンクルを野蛮な狩人から守ってあげて。キミにはそれが出来るだけの力と命がある》

ホログラムの中のリリスは、サタンの頬を愛おしそうに撫でた。実体ではないし、そこに感覚も存在しないが、再び彼女に出会えた気がして、サタンはリリスが立ち去ったあの日から、初めて笑みを浮かべた。

「……約束しよう。カーバンクルのことも、彼らのことも、私に任せておけ。私が魔王サタンとして、人々の畏れとなる。そうすれば、彼らの住処に易々と寄ってくることもあるまい」

リリスは「ありがとう」とお礼を言って、それから、と自分の胸に手を翳した。

《この世界は、残念ながら万全じゃない。人間一人の力で、世界を救うなんて烏滸がましいことだ。いつか限界が来て、そこから一気に滅びてしまうかもしれない。もし、その時が来たら――》

リリスの胸元から、強い光の固まりが現れた。
あまりのエネルギーに周囲の草木がざわめき、みるみるうちに成長し、花を咲かせ実を付け始める。

《――大切だと思うものを持って、違う世界線に逃げて。その先でもしも私の転生体に出会ったら、今度はこんな過ちを、大きすぎる運命に巻き込まれないよう、見守ってあげて欲しい》

これは世界を修復する時に見つけた、無数に満ちるエネルギーの一部だと、リリスは光の固まりをサタンに押しつける。

《期待してるよ、大切な人。……どうか、その永遠の命の先に、幸を導く光あれ》

光の固まりが目を開けていられないほど強く輝き、その輝きが消えた時、目の前からホログラムが消滅し、後には石版だけが残された。

自身の中に漲る、今までよりもさらに強いエネルギーを感じながら、サタンは石版に背を向け、決意を表すように数歩足を進めた。

「……帰ろう」

ちょこんと立って、小さな瞳でじっと石版を見つめ続けていたカーバンクルが、ぴょこんと耳を立て、サタンの方を見た。

「ぐー」

てちてちと歩を進めた先で、カーバンクルは足を止め、石版を振り向く。

「……ぐーぐ!」

力強く鳴いて、カーバンクルは一気に駆けだし、サタンの肩に飛び乗った。



帰ったら軍勢を再びまとめ上げ、立て直そう。
何も無いところからのスタートになる。そう考えながら、サタンは50年ぶりに住処に戻った。

久々に上から見た住居の周りは酷く荒れ果てていた。
手入れがされていないだけではなく、何物かに攻め込まれたのか植物は滅び、
あちこちに焼け跡や衝撃の後が残っている。

リリスも去った今、ここにはもう何も居ない。
荒れ果てた土地も、魔王らしくて良いでは無いかと心機一転し、降り立ったのだが――

「……グル……」

――家にしていた洞窟の前では、傷だらけのドラゴンが、じっと立ち尽くしていた。

《おかえりなさい》

ドラゴンは大きな尾を揺らすと、深々と頭を下げ、地に顎を付けた。

「……ずっと、待っていたのか……?」

ドラゴンはゆっくりと頷いて、サタンを見つめた。
その体は多くの傷や爛れが刻まれていて、とても痛々しい。数々の攻撃を受けたのだろう。

《ちゃんと守ったよ。お留守番出来たよ。えらいでしょ》

「っ……、どうして戦った、戦う理由なんて無かった筈だ」

声の震えを抑えて動揺を隠し、問いかけるサタンに、ドラゴンは微笑みかけた。

《サタンさま、帰ってきた時におうち無いと困ると思ったから
 あたしバカだから、戦うことくらいしか出来なくて、いっぱい荒らしちゃったけど、でも》

住居の扉を開けると、洞窟の奥は、出て行った時と何一つ変わってはいなかった。
リリスが置いて行ったティーカップも、見ただけで以前の日常が思い出せるほど、平穏にテーブルに鎮座している。

《ちゃんと守れたからさ、ご褒美欲しいな》

「………、……良いだろう。何を求める?」

ドラゴンは、飲まず食わずでも数百年生きられる高等生命体。
しかし、相当無茶をしたのだろう、彼女の魂がもう殆ど残っていないことは、一目でわかった。
体の傷を治すことは出来ても、消耗された魂まで修復することは出来ない。

《えっとね、あたし、生まれ変わったらサタンさまみたいになりたいの》

そして、それはドラゴン自身も理解していた。
彼等は個体数も少なく滅多なことでは繁殖もしない代わりに、
魂が尽きる時、新たな命として転生する特性を持っている。

「もっと力が欲しいのか?」

《ちがうよ、そうじゃなくて、もっと小さくなりたいな》

「小さく?」

《あとね、もっと体もすらっとさせて、かわいい手足も欲しい》

「……なぜそんなことを望む? 竜であることが不満なのか?」

そうじゃないよ、とドラゴンはサタンの顔に鼻先を近づけた。

《あたしにも竜族の誇りはあるよ、でも、ちょっとこの体は大きすぎるかなー
 こうしないとサタンさまの顔もよく見えないし、おうちにも入れないしね》

「……なるほど……」

《それに、正直、側で二人を見ててちょっと羨ましかったんだ。あたしの体じゃ、
 力で守ることは出来ても、側で支えることは出来ないもん》

口ごもるサタンを前に、ドラゴンは俯せになって、そっと目を閉じた。

「………」

それから、もう何か話すこともなく、
ドラゴンの体は光に包まれ、後には一つの卵が残された。

「……良いだろう。お前の願い、叶えてやろう」

サタンはタマゴを中心に巨大な魔方陣を描き、宙に向けて羽ばたいた。

今までの経験、知識、それから、一時の平穏の中で溜め込んだ魔力と、
リリスから受け取った力の一部を用いて、サタンは卵の中の存在の一部を、書き換えた。

「――お前を、サタン軍団最初の軍勢として、歓迎しよう」


~~~~~~



「っていうかさー、なんだろ? あの人アホだしすぐ反乱されそうだから、
 やっぱあたし達みたいなのが居ないとダメだと思うんだよね-、やれやれだよ」

「典型的なダメーンズのセリフの上に究極に失礼でしてよ、……正直否定はしないけど」

ドラコとウィッチはたわいも無い会話をしながら魔法薬の材料を探し、
それが大体揃うと、ドラコは翼の先までピンと伸ばして大きくのびをした。

「じゃーあたし行くね、ずっと止まってたら体鈍っちゃうよ」

「どっかの回遊魚みたいな体質でしてね。いいわ、私もそろそろ帰るとこだから、
 ちょっと森の上まで連れてってくださいません? 狭いところじゃ飛び立ちにくいのよ」

「ん、いいよー」

ドラコはそう言ってウィッチを抱きかかえると、そのまま一気に森の上まで急浮上した。
何も考えずに木を突っ切ったため、もれなくウィッチは盛大に木の枝にぶつかりまくることになる。

「ぎょえー!?」

「あっ、ごめーん」

ごめんじゃないですわ、と怒るウィッチの前でケラケラ笑って、
ドラコはウィッチを宙に放った。ウィッチはホウキに跳び乗って、ドラコの隣に浮かぶ。

「まったく……、とっとと帰りますわよ、カフェでも寄ってく? 一つだけ奢ってあげますわ」

「ホント? やったー! ……、……あ、ちょっと待ってて、すぐ戻るから!」

ドラコが突如方向転換し、何かと思って下を見れば、
そこにはなにやらサタンさまがご執心の橙色のポニーテール。

合流してもいいのだけれど、特に用も無いし、とウィッチは息を一つ吐いて、
ホウキに横座りすると退屈そうにドラコを待ち始めた――


終われ
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リリス…

よりも、ドラコの方が可愛いと思ってしまった。不思議。
あ、更新お疲れ様です!

!!!!!?????

雛さんが魔導の話を!?
しかも真魔導年表のラグナロクとは……フィバ組の創作をなさるイメージが強かったのでビックリしました……

ブログのトップページ開いた時に「リリス様!?ヤッタwwwイエーイwwwwwフオオオオ!!!!!www」ってリアルで言っちゃったのは内緒(白目)
リリス様大好きなんです……はい……

もう11月も終わり、風邪を引きやすい時期になってくるので体調にお気をつけてください。(あまり気のきいてそうな事書けて無いな……)
長くなりましたが最後に、ぷよぷよタッチという新アプリのキャラの衣装が可愛いと添えておきます(コソッ

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ハツラツ健気なドラコちゃんかわわ

ドラコのお母さんもしっかりサタン様にお仕えしてたんですね…。健気っ娘もいいですよね、テンプレなお涙頂戴だけれどそこがいいと思います!

それにしてもリリスとかの真魔導設定で盛り込んでくるとは…!あそこらへんの設定は小説が先走りしすぎたのかどんどんどんどん厨二病満載になってますよねw年表とか見てるとなぜか読んでるこっちまで恥ずかしくなってきます…(

でもドラコも健気で元気でかわいいけど、ぶっちゃけアホの子具合は変わらないと思うの(・ω・` )

シリアス更新おつです~

雛嬢さん………あなた神ですわ(今更)
シリアスなのにちょっと感動しました~
また次も楽しみにしてます(*´ω`*)

No title

ヘレさん>

色々ねつ造しちゃいましたw
ありがとうございます!(・ω・´*)

リリーレッドさん>

フィバ軸じゃないものもたまにはしてみたいなと思いましたが
振れたことが無いためほぼほぼねつ造みたいになっちゃいました…(


紫野 菖 さん>

ありがとうございます!
寿命が長い故に前世からの付き合い的な設定いいですよね!


Rimuさん>

ありがとうございます!
何故かミスしてました…修正しました!(`・ω・´)


ウバメさん>

お母さんというか、原種というか…
人と竜が不自然に混ざった形についてちょっと考えてみましたw


くるくるさん>

ありがとうございます!
またしばらくギャグ更新だと思います('ω' )三('ω')三( 'ω')
プロフィール

o雛嬢o

Author:o雛嬢o
気まぐれ多趣味な私、雛嬢が自分の好きなジャンルの小説や
イラストなどをまったり書き綴るよろずブログ。リンクフリーです。
カテゴリ一番上にある必読記事は読んでくださいね。

現在のメインはぷよぷよ・ポケモン(プレイ記)となっております(・ω・´*)
ただリアルの事情で更新頻度やや低下中……。

申し訳ありませんが、現在フレコ交換受け付けておりません。訪問者さん同士での交換所はこちら→3DSフレコ交換所(pass:3dstrade)

※過度な下ネタ、中傷、転載等のマナー違反を繰り返し、
注意しても改善されない場合は他の方々にも迷惑なので
コメントの規制をさせていただきます。ご了承くださいませ。


ゲームで気まぐれに対戦部屋を開いたりしている時がありますが、その時はお気軽にご参加くださいね!

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